足下の五百万石
秋の訪れを感じさせる雨降りの午後、和歌山県紀の川市打田の五百万石の栽培田を訪問した。専業農家K氏がこの紀北でも酒米栽培を始めてくれたのは本当にうれしい。彼が6反、もうひとりが1町と約120俵の地米の好適米は私が買うのだ。今年は少し地元米比率が上昇しそうである。今の感覚では純米酒「きのくに」をこれで作れれば最高である。K氏は70歳だが元気で1.5町の米作をしている。富山の35町の専業農家とは規模はまるで違うが、他にもイチゴ等を栽培しているうえ、二毛作が可能な紀の川平野であるから簡単に収入の比較はできない。イチゴの植え付け(定植)で忙しくなる前に稲刈りを済ませたいので、ワセ(早く収穫できる米種)を採用したという。五百万石は酒米のうちワセ(若生)である。残りは日本晴だが、話していると日本晴も馬鹿にはできない品種らしい。日本晴というと普通酒用の地味な米で飯米にもなる、程度の知識しかなかったが、寿司用にはいいらしいのだ。寿司は昆布を引いて炊き込み、酢と砂糖をしみ込ませる。堅く炊きあがる日本晴にはよく染みいるので、寿司屋が好むという。同行した米屋の会長がおっしゃるには、最近はその傾向が一部弱まっているそうな。つまり回転寿司の機械巻きには堅い米は向かない。また若者は小児期から柔らかい米に慣れていて堅い日本晴は敬遠される。マヨネーズを寿司に塗るような時代になってはどうもしかたがない、と。意外な蘊蓄を聞けて喜んでいるうちに雨は大降り、日も暮れてきた。雨中案外いい色に田は見受けられた。豊作である。
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