産地訪問(兵庫県西脇市)
いい天気の週末、かねて打合せの通り山田錦の主産地を訪問する。和歌山市から近畿自動車道から吹田で中国自動車道で滝野社まで走り、加古川沿いを10㎞弱北進する。だいたい170㎞くらいで黒田庄町の集荷業者の倉庫まで到着した。高速のサービスエリアには幟が立てられていて、「黒田庄和牛 神戸ビーフの産地」とあったから畜産もさかんなんだろう。
家族経営の若い業者さんが当社銘柄を知っていてくれたのは驚きだったが、皆営業でこの程度の距離の範囲は充分活動しているということらしかった。都市部でお米の勉強会を主宰している女性を駅でピックアップしてから栽培農家を訪問し、倉庫でお話を伺う。丹波市山南町小川地区になるのだろうかそれから圃場を廻るのだが、酒屋に米屋、集荷業者に農家、環境意識の高い消費者と集めれば漫然と風景を眺めるような雰囲気ではなかったのは当然だろう。
今年は山田錦の作柄は良く104、105くらいかもしれないとか。山田錦を1.5ha、コシヒカリを5ha、減反した3.5haは麦と小豆で二毛作。10ha規模の専業農家が保有する倉庫の機械設備はちょっとした工場で20馬力の乾燥機が3台が唸っている。小さいのを入れれば4台ある。一台は遠赤外線式だ。4条60馬力とおぼしいコンバインが入口に駐車しているがまだ新しい。これなら1時間3反くらい慣れれば刈り取れるらしい。機械の中で籾はフレコンと呼ぶ600㎏の袋に入るが、倉庫ではまず乾燥、そして籾擦り、それから米撰機を通して仕上がる。丁寧にやるぶんにはさらに今でも唐箕を通すらしく江戸時代のような手回しのものと、電動で送風する山形県のメーカーの唐箕が置かれおり、これを見たのは初めてだった。コシヒカリのうち134アールはJAS指定を受けた有機の圃場で、今年はさらに100アール追加するようで、都合2.4haが有機となれば、コシの半分は有機になるから、そういうカテゴリーへの直接販売も増えてくるはずで、唐箕はたぶんそのためのものだ。1年完熟の牛糞たい肥を使用するご方針のようで、いやまったく頭が下がる。
今回の視察では新しく覚えた知識も多かったが、一番の感想は農政の行き詰まりだった。政治家は選挙に勝つため専業農家を苦しめている。何故この農家に1/3の減反をさせる必要があるのか非常に非効率に思えた。土曜のことで通り道、親戚どおしで小規模兼業農家が稲刈りをしている。頭数は彼らが圧倒的で、他に安定収入もあるから余計強い。よって経営規模拡大、担い手育成は進まないわけだ。
他に山田錦と、無施肥無農薬の農林22号、初霜の圃場も見てきた。主産地であるがゆえ問題は目立つ気がした。
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コメント
まさにそうであると思う、政治家共があめりかに媚を売るがゆえに此度の三笠フーズの事件がおきたのではないか!念のために聞いておきますがまさか天下の黒牛純米酒が事故米でできてることはないですよね。掛米で使われたら味に反映されないので消費者にはわかりません。ではこの辺でごめんください。
投稿: 中谷 | 2008年9月11日 (木) 15時22分
┐(´д`)┌ 当社では今回も過去もその手の先からの調達はありません。当社製品では掛け米に酒造好適米と書いてありますから、そうでないといけないわけです。あまり触れたくないテーマですが、今回で問題なのは1㎏300円くらいはする(玄米ベース)、山田錦なら400円とかですが、高い米をまともな酒なら使っているのに、被害者なのかどうかは別にして、1㎏100円以下の米を焼酎、それも結構高いもので使われていたのが知れ渡ってしまったことだというのが、業界内側の人間の感想です。あれで何で純米酒より高いのだというか。
投稿: 不断齋 | 2008年9月12日 (金) 22時03分
追加。掛け米に使ったらわからないというのは違うかと。たしかに麹米やもと米の方が酒質に与える影響大なので、予算制約の中で麹米により高い米を配置したり精米歩合をより低くする例は多いのですが、掛け米も大事で、加工用米や屑米などを使うのは非特定名称酒に限られます。味に差もでると思いますので。
投稿: 不断齋 | 2008年9月12日 (金) 22時16分