コウヤマキの枝を採る
野迫川村に来たのは久しぶりだから、コウヤマキの葉を採りに行くのに同行することにした。和歌山県の高野山に多いことに由来する命名で、杉の仲間だ。これを紀和一帯では仏壇、墓に供える。香りが強く切り立てだと手に持つだけで脂が手につき、またその香りは杉より数等強く、ちょっと甘い香りである。ジャグジーだのジェットバブルだのという趣味ではなく、日本の伝統の住まいに凝る通人は、コウヤマキで作った浴槽を据えることを最高の贅沢とした。香りがよく腐りにくいからである。またケヤキの半分くらいの重さしかなく軽い木でもある。
林道の終点から徒歩でたどり着いた乾燥土壌地の傾斜面に人工のコウヤマキの林分がある。山持ちさんと契約して枝を採らせてもらっているそうで、これを宅配便で消費者に直送したり、トラックに積んで年に6回ばかり蔵近くの広場まで売りにくる。安いし鮮度は最高とあって、客が取り合うほどの盛況となるのだが、実際葉を採る現場を見るのは初めてだった。
もっと低い平坦に近いところで畑みたいにしているのかと思いきや、枝打ちに使う梯子で高所作業をしていたのには驚いた。素人が真似ると転落骨折である。けっこう円錐状のがっしりした成木のかなり上部から採っていく。15年生くらいから枝は採れるらしいが、同じ木から2~3年置きで採れるようにうまく枝を選んでやるんだそうな。薄く採るということは1本の木から採れる本数は減って、梯子の上り下りが増えるから、当然仕事はきつくなる。楽に済ませるなら、1本の木を枯れない程度にまる裸にして痛めてしまうことになる。花卉業者に作業を委託するとそうなるので、彼は絶対それをしないそうだ。当然人も雇うそうだが、特殊性からか、コウヤマキ採りの職人は日当が高いそうだ。2万円とか聞く。今日は間に合わせやから、忙しい時はこの3倍はかつぐよと言われるが、畳のへりを紐にして巻いて、担いで山を下りていく。
蔵へ来てくれるのが、春と秋のお彼岸、盆の前、11月の祭り、正月の前、販売予告を看板にして貼らねばならないほど客は待ちかまえている。けどな、こうして採ってるのは皆知らんやろうに。
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