トップが二位以下をたたくとき 兵庫県産山田錦サミット
山だ街だと走り回る1週間で、今後を占うイベントのことを整理する時間がありませんでした。
JAグループが主催の兵庫県産山田錦グレードアップ発表会兼兵庫県酒米振興会60周年記念行事に行ってきたのですが、19府県の20酒造組合、30府県の90の酒造メーカーが来ていたのはさすがです。もちろんJA関係、副知事を含む行政等、産地の総力をあげたイベントでした。
グレードアップというのは、来年産から米選機のふるいの網目を2ミリから2.05ミリに大きくしたり、生産工程管理を高度化して、一気に他産地を引き離そうというトップの危機感と覚悟を内外に示すものでした。
全国の酒米の3割、山田錦の8割を産出する酒米王国、兵庫ですが、25年前なら兵庫しか山田錦はなかったのではないかというイメージで、2割も他県で作るようになっているのか、という驚きでした。一応山田錦の誕生は1936年(昭和8年)と覚えておきましょう。母が山田穂、父が短棹渡船です。
もちろん、育種家種子→原原種→原種→JAから頒布される種子と、厳格な種子管理から、適性産地の選択や技術指導といった説明を聞けば、質的量的な圧倒的地位は揺るがない印象でした。どうも種籾を持ち出して、他県で山田錦の栽培が広がったことへのいらだちが感じられました。平成初期まではほとんど山田錦は兵庫でしか入手できず、どうやって山田錦を入手しようかと他県の蔵は悩んでいましたから。
農家も作りにくいが高く売れる可能性のある山田錦を他県でも作りたい人が出てきたこともあり、徐々に広がって2割にまで至ったということなのです。
今では、差別化を蔵も求められるし、地産地消という要請もあって、自蔵や自県独自の品種を使おうという意識も広がり、質がいいから絶対兵庫の山田錦を買うという蔵ばかりではなくなってきたという問題があります。ましてや全体の需要低迷で、山田錦を必須とするアイテムの需要も減っているということがあるでしょう。それにつけても、網目を大きくすれば、ドロップアウトした粒が増えるに決まっています。どれだけ再検査にまわり3等になっているのかは不明ですが。3等なら特定名称に使えますが、全体でどういう使われ方がされているのか、蔵からは見えない世界です。
酒の場合、原料米の産地と蔵の所在地は離れているのが本来の伝統で、江戸時代までは地産地消だったというのは必ずしも正しくありません。灘が播州の原料基地を作ったとも言えますが、米消費県の和歌山の蔵としては、酒の質を考えると、あまり地産地消にこだわらない方がいいと思えます。もちろん契約栽培も地元で続けてはいるのですが。
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