新酒あげを焼肉で行う
新酒があがると蔵で「新酒あげ」と称して、蔵元が杜氏ら蔵人に酒をふるまうという慣習があります。昭和年中行事としては酛立て、新酒あげ、甑倒しと、醸造期に3回そういう日があるのが普通でした。以前は会所部屋で、夕食の時、鯛の尾頭付きと刺身大皿、すき焼きが提供されるのが慣例でした。それも平成初期の頃までで、それ以前に親や祖父がどういう関わり方をしたのか、今ではわからなくなりました。一貫して一緒に蔵元の息子である私が参加していたのです。何せ、賄い婦を伴って出稼ぎ集団が来ていたのが昭和50年代までです。杜氏を呼ぶとは、そういうものとされていたのでしょう。やがて給食センターの配達となり、蔵元の婦人が料理を付けたしたり、それへのあれこれという不評を婦人がいやがるという過程を経て、今では社員化が進んで、近所で自社の酒が安定して飲める飲食店で蔵持ちで景気づけをやる日くらいに変質していったのでした。田舎ですから居酒屋が中心になります。しかし今年はとうとう、若手の意見で、初めて焼肉屋でやることになったのでした。
焼肉屋というのは、地酒メーカーとしては鬼門に属する方です。ビール、焼酎はいざ知らず、やや日本酒には不利とされる業態です。今日は和歌山市と海南市の境近くの国道沿い、「石頭(がち)」。地元ということで、メニューにも銘柄表示していただいているのですが、ありがたいとは思いますが、それではこの業態にもっと営業しようというのには消極的です。それでも、味の濃い、焼肉には、最低純米だなとは再確認したのでした。それならビールや焼酎は何だとも思いますが、焼酎は油を洗い落とすもので、ビールは止渇飲料。焼肉の食中酒に純米酒なら、合うと思うのです。社長が遠慮するなと言っても、ビールなし、純米だけで、片付いてしまったのでした。
米の酒なので、本来一番合わせやすい酒なのです。純米以上が条件でしょうが、山廃や生酛でなくても、十分焼肉店には定着できそうです。
焼肉は七輪で炭焼のホンモンの味。無休というから今日しかないなという、日程での会場になったのかも。和歌山から海南方向に国道42号を下ってきてトンネルを出てすぐとわかりやすい。073-447-1311。
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コメント
テーブルの上に七輪、いいですねえ。
そして焼き肉に純米黒牛。確かに黒牛ならば合うだろうなと納得できます。タレでも塩・粒胡椒でも合いそうですね。
投稿: 萩原 | 2011年11月25日 (金) 16時59分
ソウルの超高級焼き肉店に何を提案するべきかと現地から聞いてくるのはいいですが、生酛か山廃でなくていいですか、という質問でした。一足飛びという感じです。日本の超高級和食店がどういう酒を置いているのか、からして、純米でいいんだ、純米で。速醸でいいと答えました。結果は知りませんが。山廃でも妙にきれいなのもあれば、速醸でも味の濃いものがあります。また純米全般の傾向からすれば、速醸純米のコストパフォーマンスは際だっています。マニアとその周辺の情報発信には最近疑問を覚えます。
投稿: 不断齋 | 2011年11月27日 (日) 22時24分