経済・政治・国際

2009年6月19日 (金)

農地法は改正されたが耕作放棄地は減るんだろうか

なぜか大阪で定期借地借家のセミナーを聞いていたのだが、税法の講師が農地に詳しいらしく今日の農地法の改正についてコメントしていた。農地の細分化を防止したい、耕作放棄地をこれ以上増やしたくない、という要請から農業生産法人が借りやすく改正したというが、はたして耕作放棄地の増加を食い止められるのか、はなはだ疑問だと思った。「耕作者による農地所有が最も適当」という農地解放以来の理念を修正したようだが、耕作放棄になりそうな田畑は農業生産法人が手を出しそうな所は少ない。耕作放棄地対策なら、小規模でも有機農業をやってみたいという都会からのI・Uターン者、NPO、規模なんて追求しない有機農家等への支援の方が効果はありそうだけどな。どうして農業生産法人にこだわるかな。とはいえ、農地を貸しやすく借りやすくで、生産効率のいい農地については、これで集約が進むかもしれない。農業生産法人の役員の一人は百姓株を持っている必要があるとしたようだが、取得対象の距離基準とかややこしかったのはどうなるんだろう。

相続税の納税猶予制度でも貸しても営農と認めるとしたようだが、農業委員会の見回り、勧告、通知、遊休農地の猶予打ち切りも決めたそうだ。ちゃんと運用されることを期待しよう。こういう部分はどうしても戦後創設された自作農家の財産保全と関係してくる。企業の参入阻止と言っても、個別農家の自己利益追求ととられるようになっては説得性を持たない。都市近郊の「財産」農地、主力生産地、棚田のような耕作放棄の可能性のある農地、それぞれに対応した発想で制度を変えないといけないんだろう。 

清酒メーカーでも方針によって狙いどころは変わってこよう。私はまず主力生産地での集約化と中核農家から大部分を買いたい。一部を地域も考慮して棚田から契約栽培で買いたい。今のところの話だ。とにかく買えるところからなんて時代が来られては困る。

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2008年10月19日 (日)

国家の品格

橋本ロータリークラブ主催で橋本市の名誉市民岡潔先生没後30周年の記念行事として、ご遺族や関係者の鼎談と国家の品格の著者、藤原正彦先生の講演が開催され、聞きに行った。これは本当にすごい話で、評論家の宣伝ではなく、3年も前にデリバティブの過剰利用が世界の金融市場を自壊させる、とちゃんと書いてある。数学者が言うのだ。論理、合理性は大事にしないといけないが絶対ではない。スタートの前提からあとは理屈どおりでいいが、何を最初に持ってくるかは情緒やトータルなバックボーンで決まってくる。美しい情緒と形が国家、国民に必要なのであり、それを復興させるには「武士道」の見直しだと提言された。今やこれがま新しく感じられるのがこの混乱した経済情勢だ。政治も教育も何もかもかもしれない。いじめの発生は確率の問題で防ぎようがないが陰湿で自殺にまで追い込むような事態は弱い者いじめをしない、卑怯を憎むという武士道精神の復興で防ぐべしとされる。これには大いに納得する。理屈を言う前にこうした事は小さいうちにたたき込まねばならない、そうなんだろうが、今の大人すら持っていないものを、どう復興させればいいのだろう。

美しい情緒と形が、文学や数学の資質だとされるが、それが「センス」というものだろうか。数学のよくできるS君が言ってたな、答えが美しく感じるんだと。言われたから参加するつもりで、国家の品格を読んだのも1週間前だったが、さすがは。誘っていただいて感謝する限りだ。

電車で帰り途、思う。こうした大きなテーマはとても自分の取り組める対象ではないが、美しいと感じるような酒づくり、経営姿勢、営業スタイル、商品開発、そういうものはできるだろう。ある種の書類についてもそうだ。真実や本物とは美しいもので、それは感受性がないと理解できずまた造れるはずもない。自分の反省としては、デザインやセンスというカタカナを軽視してきた気がする。わざとだらしない恰好をして平気だった。見栄とか、軽佻とかと混同してきた気がする。急には変えられないけどな、何せセンスがないそうだから。

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2008年9月20日 (土)

溝は深い

大阪で内橋克人氏の講演を聞く。1カ月前だかに竹中平蔵氏の講演も聞いていたので、今の日本の識者の考えの分裂の深さを思うのだ。片や格差社会を作り自分も利害関係者だと呼び(名指しはしないが)、片や経済構造を合理化し国際的競争について行けないのでは結局国民は貧しくなるという。極端に言えば、貪欲・冷酷と無知・非合理と互いに批判しているようなものだ。

多国籍企業と地域を担う中小企業を対置して、対抗する思潮を持つように、誠実に内橋先生は話された。曰く、多国籍企業は30社で外貨の半分を稼いでいるそうだが、利益は法人税の安い海外に残すか投資し、国内では商店街を潰し格差社会を作り、地域になどトリクルダウンしない。これはそのとおりで大企業と付きあってもうかったやつはいない。だがそんな二分法が適当だかどうか。株式公開したとたん、あるいは従業員が300人を1人でも超えた瞬間、善玉から悪玉に変わるものだとは思えない。現実の競争環境はそんなに単純なものではなく、立場が強い者が自分より少しでも弱い者には酷薄である連続の結果にすぎない。もちろんそういう者ばかりではないが、「公正」な競争という概念が日本には未熟で、戦国時代の国盗りか中国の孫子だ三国志だのと、軍事闘争の延長的発想で競合とつぶし合いをしてきたのが事実に近い。公取なんぞもその辺の理解はなく消費者利益のための競争促進が先行して、不当廉売だの差別対価だのへの取組はまるで充分ではない。

現在、対置しているのは多国籍企業ではなく、4社で10%程度のシェアしかないNB10数社か地域の中堅?程度であるが、地酒界などまさに蝸牛角上の争に過ぎない。内橋先生には喜ばしい傾向だが、しだい地酒については「小さいことは良いことだ」の考えが強くなってきている。大仕込みよりは小仕込みの方が丁寧だとなればスケールメリットなどないに等しい。

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2008年6月30日 (月)

勝間和代氏の利益方程式

週末くらいしか週刊誌を読んでる時間がとれない人は多いだろうが、経済雑誌に勝間式「利益方程式」のオマケ冊子がついていた。利益=(顧客単価-顧客獲得コスト-顧客原価)×顧客数となりますが、適正な利益管理のためには、式の各変数について、全社で情報を共有しつつ、仮説を立て実行、検証してくださいとされます。

 また、日本の企業が儲からない理由を分析してくれている。強い労働規制については同感、解雇できないから儲からない仕事を変動費ぎりぎりでやらせてしまう。本当は新製品新市場の開拓に使わないといけないが儲からない時ほどリスクが取れないからね。次に、日本は中小企業を温存する仕組みがあり規模の利益が働かない、ために効率があがらない?。建設とかのことを言ってるんだろうな。法人税、交際費で優遇がある。3番目の英語の壁は省略。ROIの低いハードルというのは、日本全体が成長余力が乏しいことの反映で、高金利になれば過当競争がなくなるとは思えなかったが。

これらの最近の変化について、解雇規制の緩和はあるが何より若年層の減少で3Kでは人が来なくなるので儲からないことはやってられなくなる。これはそのとおりだ。ちょっと違うなというか違う方向もあるなと思ったのはITの進展についてだ。ITの進展によって小規模の企業が生き残れなくなる、という指摘だが、ITの進展によって、小規模・地方の企業もそれなりに立場を得られる可能性も出てきているわけで、半導体や流通とは違うのではないかということだ。地酒など些末な業種だと言うならそれもいいが。ただし、環境規制や表示、衛生等の規制レベルが上がるにつれて当然小規模事業者(当社も含めて)は表通りの世界から追い出されていくことになる。つまり大手流通ルートにのり、EOS、ISO、HACCP等に対応するには規模拡大は避けられない。そんな所に背を向けた者が集まって地酒だか銘酒だかの市場は成り立っている。いずれにせよ不採算事業は残しておけない。それは賛成だ。

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2008年2月15日 (金)

徴候

関西でトップの酒ディスカウンター(自称は専門大店)が民事再生法を申請した。しかしまったくの伸び盛りで全国3位、60店舗の酒販店に業務スーパー9店、年商約300億、社長は交替したばかりだが、昨年夏には「賢者の選択」にまで出演している。どこかの酒雑誌は提灯記事を書いていたはずで、業界新聞で取り上げられること再々だった。この状況で売り込みたくないというメーカーはいなかったはずだ、特に中堅以上では。当社に被害はなかったからと喜んで言い廻りたいのではない。何か徴候は出ていなかったのか、そういうものを感じ取れないと、自分もやられるか損失を抑えるのが遅れてしまう。だから今さら調べるのだ。同じ市場の取引先と話すと業務スーパーが足を引っ張ったという。最初の2店はよかったが後は全敗とか。既にサイトに出ている所では、DSの方も最近1年の出店した店は軒並み赤字とあるが、いかにマスコミだけで判断していると恐いかということである。急激な出店で社員教育や管理が追いつかなかったのか、はたまた無理な資金繰りの中でちょっとしたことでショートしてしまったか、想像するのは難しい。サブプライムローン問題の国内への波及から急に融資態度を銀行が変えたのかもしれない。11月以降苦しくなったというのが臭い。支援先候補の名前が最初から出てるのは別の意味で臭いとか、皆勝手なことを言っているが、メイン行が知らなかったはずはない。酒の場合12月に極端に取引が集中するので、売掛金の残高が最も膨らむこの時期にやるというのが、納入先には憤激の的だろう。しかし激しい変転だ。どこかのプロデューサーと先生にも痛い失点だろう。

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2007年12月23日 (日)

衒示的消費

ある回想録で「衒示的消費」について説明されていた。19世紀の経済学者ソースタイン・ベブレンが作った言葉で「個人の財・サービスの購入は、隣人に負けないように見栄を張ることと結びついている」という、日頃よく見聞きされる人間の行動の一側面である。ありすぎても困りものだが、なさすぎるのもつまらないものだろう。              先日、「記念消費」について清酒がワインに領域を譲りすぎたと書いたが、この「衒示的消費」についてはどうなのだろう。日本酒党は賢いので、すぐに値頃感とか価格の割にうまいとかを追求してしまうようだ。結局それはブランドの評価に回収されるから結構なのだろうが、身近なうえに過当競争の業界の価格情報が充分社会に行き渡ってしまっているせいだろうか。また、安売りというか安過ぎる価格設定をする、いやさせられた、一部メーカーの影響もある。もう少し見栄でもいいから高く売るアイテムもあっていいし、俺はこれくらいの者だからとか、今度あてたから、とかの理由をつけて高い酒をそれも見せびらかして飲まれるように、したらいいのでは、というわけだ。これに対応するアイテムを各社はそれなりに大吟醸とかで発売しているが、どうもギフト用というイメージが強く、この衒示的消費やら記念消費に対応できていない、というかワイン、シャンパンに取られていると感じるのである。同じお金を出すなら確実にワインより高いランクのものが吟醸は飲めるはずだが。 

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2007年11月 4日 (日)

顧客志向(2)

 当社サイト(http://www.kuroushi.com/) をみていただくとわかるのですが、どう見ても、販売店、提供店(料飲店)支援型になっています。つまり当社から仕入れて売る人やその先で業として当社製品を飲ませる人が売りやすいように情報や支援ツール(ラベル、カタログ、製品写真がダウンロードできる)を提供することにウエイトがかかっています。どこへ行ったら買えるか、飲めるかは、のせていない。これは販売店なりが、こういう銘柄があるとPRしてくれることを期待しているという、非常に他人まかせの遠慮したスタイルとなっているのです。もちろん他社のサイトよりは情報露出は多いので、どんな蔵か知りたいとか、地酒に興味がある人への一定の対策にはなっているはずです。好みでしょうが、イメージ・プレゼンテーションやデザインに凝った部分は予算の関係で×です。まだフレームのままです。

 顧客志向と言っても、直接の顧客(販売店等)とその先のエンドユーザーのどちらに力点を置くか各社違いがあるのですが、区別していないかわかっていないような所もあるようです。当社もこれからはもっと最終消費者向けのサービスを充実させていきたいと思っていますが、あくまで販売先をたてるという制約があります。

 これだとサイトの更新は月に1回あるかどうかで済みます。その分ブログで補おうというのが当面の方針です。

 

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2007年11月 3日 (土)

顧客志向

「当社はお客様を第一にする方針です」とは、多くの会社が標榜していることである。しかし、顧客とは何だということになると、難しい所も出てくるものだ。

世間は休日ながら、当社売店で実績ある酒販店の主人と話し合う。ここで重要なのは、相手は実年で、ある地方都市の盛り場を著名ならしめた飲食店向き酒販店(我々業務卸と呼びますが卸売業者ではなく小売業者です)、こちらは新人類と団塊の世代の中間で仕事のためなら、パソコンも使うが、成人する前からゲームとかで楽しんで覚えた世代ではないという、いささかITを語るには不向きながら、べたな実戦は積んできた(自分はちょっと)2人というところだ。

この両名で、メーカーがどんなサイトを作るべきかを話すというのはちょっとつらいが、さて、「銘柄Aを買える店」をリストとして出すべきかどうか、また「飲める飲食店」をリストとしてサイトに出すべきかどうか、ということになった。これは、最終に飲む人間には便利だろうが、企業からすると顧客リストを同業者にも公開するに等しいことになる。また、メーカーのサイトで製品を販売することは、小売店にとってどう思われるか、ということである。「カゴに入れる」とか、カード決済があれば、すぐほしい人には親切だろうが、販売店は厭がるはずだ。でもキャノンだってデジカメは売っているし、航空会社だってサイトでチケットを売っているではないか。

有名な地酒専門店にホームページのことを聞くとたいていの答えは、メーカーはホームページなんて要らない、である。その真意は何だろう。

結局、各社の戦略しだいということになるか。

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